『クライマックスU.C.』についての感想を書いてみる

昨日紹介した『機動戦士ガンダム クライマックスU.C. ―紡がれし血統―』について、俺的にヒットした部分について書いてみる。


今回は主人公カムナ率いる「カムナ小隊」が、『0083』の世界でデラーズ・フリートと戦うエピソードについて。
宇宙世紀モノにおける「連邦vsジオン」と言えば、「優等生な連邦キャラ」と「個性的なジオンキャラ」というパターンがお約束。本作もそれに従って、エリート優等生なカムナと対照的な、濃い目のジオンキャラ「ザック・ウィンザー」が登場する。


このザックがカムナたちに言い放つ台詞が、また突き抜けているワケで…以下に紹介。

連邦の小隊長よ…
貴様は何のために戦っている?
俺はジオンの栄光のため
スペースノイドの未来のために戦っている
そのためなら何だってやってやる


世界のルールが俺たちが勝てないルールならば
ルール自体をひっくり返してやる!!


ルール無用 結構!!
民間人虐殺 結構!!!
無差別テロ 結構!!!!


ああ、何度でもやってやる!!!
俺の命が尽きるまで!!!
連邦を!!!
ジオンの大儀を阻むものを!!!
殺して殺して殺し尽くす!!!


殺す殺す!!!
殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!!

…うん、コレは何かのテンプレに使えるな、メモメモ。


で思うに、このザックは『0083』のアナベル・ガトーのネガ像なんだろうな。
ガトーは「1年戦争の敗戦を耐え忍び、ジオンの大儀と栄光のために立ち上がった“漢”」として描かれ、『0083』の主役であるコウ・ウラキを凌ぐ人気と存在感を誇っている。
でも、それは裏返せば、一年戦争の敗戦を何年経っても受け入れることができず、ガンダムを強奪したり、核攻撃で連邦艦隊を襲撃したり、挙句にコロニー落としまで起こしている。
これは誰がどう考えてもテロ行為だ。


本作は連邦キャラのカムナ視点で描かれていることもあり、この点を真正面から批判している。
「これは戦争ですらない…テロだッ!!!」
「テロに大儀などあるかあああッ!!!」
これは劇中におけるガトーの行為はもちろん、ガトーを(意図的か結果的かは別として)ヒロイックに描いた『0083』という作品へのアンチテーゼじゃないのかな…と思ってみる。


以下、ネタバレ気味なので白フォントで隠します。

最後、カムナはザックの言葉を受け止めた上で、「俺はお前のような男を止めるために軍人になったのかもしれない…」と言い、ザックを倒す。
その時のザックは、何かの憑き物が落ちたかのように微笑んで、散っていった。
そしてカムナも、新たな決意と共に『Z』の世界へと、新たな宇宙世紀へと歩んでゆく。


ここも『0083』と対照的かな。ウラキはガトーの言葉を受け入れることも、それに対する答えを発することもできなかった。そしてガトーは玉砕し、ウラキも屈辱と後悔を抱いたまま、宇宙世紀の表舞台から消えていったのだから…。