ファーストなのは視聴録(後)

昨日に続いて『魔法少女リリカルなのは』、俺的通称「ファーストなのは」の感想のようなものを書いてみる。
今回はシリーズ後半の7話〜13話について。


ジュエルシードを巡り、交戦を重ねるなのはとフェイト。そこへ時空管理局の執務官クロノが介入してくる。クロノはジュエルシードが複数の次元世界の崩壊を起こし得る危険物質であることを告げ、なのはに手を引くよう勧告する。しかし、なのはは危険を承知で協力を申し出る。そしてユーノと共に時空航行艦船"アースラ"に乗り込み、ジュエルシード集めを続ける。
その頃、フェイトは高次元空間にある要塞"時の庭園"で、母のプレシアからジュエルシード集めの遅さを理由に猛烈な折檻を受けていた。
…このあらすじ、魔法少女モノに有り得ない、有ってはいけない言葉が出てくるなぁ。何だよ「折檻」って。でも、ホントにそういう内容なんだから仕方が無い。時空管理局の登場を機に、物語が一気にマクロ化・シリアス化してくるワケで、以下はネタバレ含むので畳んでおきます。


7話から物語の舞台が、家族や友人のいる「日常の世界」から艦船内で異次元の軍人(に近い立場)に囲まれた「非日常の世界」に移ることに。それに合わせて、アースラの面々が高町家に変わる、なのはの擬似家族となっている。クロノとエイミィがお兄さんとお姉さん、艦長にしてクロノの実母であるリンディがお母さん。父親的人物がいないことを除けば、高町家の家族構成に酷似しているなぁ。劇中でなのはママこと桃子とリンディが会話するシーンがあるんだけど、似た者同士ですぐに意気投合していたし。
ジュエルシードの回収を、さながら軍事ミッションの如くこなすなのは。それについてリンディ母さんが「こっちの切り札(クロノ)は温存しておきたい」とか言うあたり、腹黒さもチラホラ。ちなみにリンディを演じているのは久川綾さん。この頃既に「魔法少女モノのママさん」という、母親キャラの典型を演じていたんだよな。一昔前だったら、なのはやフェイトを演じていたのかもしれないけど(笑)。これもまた、時代の流れかな。


一方、フェイトを巡る諸々の事象も明かされる。フェイトは母親であるプレシアに命じられるまま、理由も教えられぬままジュエルシードを集めていたこと。今は狂気の人となった母が、ジュエルシードを集めることで元の優しい母へと戻ると信じていること。そして何より、フェイトの正体はプレシアの事故死した娘・アリシアを元にした人工生命体であり、プレシアにとっては忌み嫌う「娘の失敗作」だった!…うわ、ヘヴィだ、ヘヴィ過ぎる。
これに比べたらなのはは、アルフ*1が言うところの「優しくしてくれる人たちのところで、ヌクヌク甘ったれて暮らしているガキンチョ」以外の何者でもないよなぁ。


で、そんな過酷な宿命を背負ったフェイトに対して、「甘ったれたガキンチョ魔法少女」であるなのはがとった行動は何か。それは「全力でぶつかること」だった。少年漫画で言うところの「拳と拳で語り合う」と同義語ね。
なのはは基本的に優しくて純粋で生真面目で明朗快活な優等生キャラなので、裏を返せばドラマの中心になるような要素…具体的には悲しい過去や暗い宿命は背負っていない*2。そういう要素は本作ではフェイトが、次作『A's』では八神はやてと守護騎士が、つまり相手側が一身に背負っている。そんな相手となのはが全力でぶつかることで、相手側の背負っているドラマを引き出している。これが『なのは』シリーズの基本的な展開らしい。現在放送中の最新作『StrikerS』でも、なのはの教え子である新キャラのスバルとティアナがドラマの中心らしいし。
変な例えだけど、なのはは「主役」と言うよりも、各シリーズで登場するキャラクターが持つドラマ性を最大限に引き出して物語を進める「司会進行役」なのかもしれない。そう考えると、序盤で魔法少女になることへの迷いや葛藤が描かれなかったのも、最初から強い魔力を持っていて魔導師としての成長過程が描かれなかったことも、物語的に重要ではなかったからなのかもしれない。


かくして迎えた最終決戦。なのは、ユーノ、クロノの3人でプレシアの要塞に乗り込む。さらに復活したフェイトが、水樹奈々さんの挿入歌をバックに颯爽と駆けつける。どう見てもフェイトが主役です、本当にありがとうございました。そしてエピローグとなる後日談では、なのはとフェイトの涙涙のお別れと再開の約束を描いて完結。
魔法少女モノのお約束として、最終回で主人公が魔法を返して普通の女の子に戻る、というのがあるんだけど。ほら、「普通の女の子が魔法を通して色々な経験をして成長して、仕上げに魔法との"別れ"を乗り越える」というパターン。でも、本作ではそのパターンを破り、なのはは魔法少女を続けることに。この時点で既に、続編(『A's』)を見越していたのかな?


…と、色々と感想のようなものを書いてみました。感想というより分析になってしまったような。
これも一介のヲタによる私見ということでご勘弁下さい。


『なのは』シリーズも、まだ『A's』と放送中の『StrikerS』があるので、また機会があれば本Blogでも取り上げてみる予定。
まぁ、期待せずに待ってて下さいな。

*1:フェイトの使い魔。桑谷夏子さんがハマり役だぞ!

*2:本当は何某か背負っているけれど、本編では描かれないだけかもしれない