今更ながら、話題のこの一冊

『オタク成金』あかほりさとる


オタク成金 (アフタヌーン新書)
オタク成金 (アフタヌーン新書)
おすすめ平均
starsおたく攻略
starsオタク論でなく、ビジネス書として読むべし。
stars著者が悪いわけではないのですが
starsリアルでした。
stars読めば納得の、成金作家創作術

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あかほり作品は『天空戦記シュラト』『爆れつハンター』『セイバーマリオネット』シリーズなどアニメに加え、『のわんちゃってSAY YOU!』『ポリケロかしまし』のアニラジも聞いていた僕だけど、あかほり氏の著書を買うのはこれが初めてだったりする。


内容は、あかほり氏のデビューからの栄枯盛衰ぶり、作家志望者へのアドバイス、そしてラノベ業界・アニメ業界への未来に対する危機感が、基本的に飄々と、極まれにシリアスに綴られている。
興味深かったのは現在で言う「ライトノベル作家」の印象があるあかほり氏のルーツは「企画屋」であること。小山高生氏(『タイムボカン』や『ドラゴンボール』でお馴染みの脚本家)の門下で川崎ヒロユキ氏や荒川稔久氏と出会い「脚本では彼らに叶わない」と、企画や営業でアピールすることに。その後、『シュラト』や『ラムネ&40』の企画をやってけど「企画だけじゃカネにならない」ということで自作のメディアミックスを仕掛けることになったという件。こうして考えると、あかほり氏の著作というのは、メディアミックスを前提にした文字通りの「原作」であり、企画書の延長なのかと思える。
そして何より、タイトルに「成金」とあるように、メインテーマは「売れる作品」の作り方。ライトノベルやアニメといったエンタメはサービス業であり、売れなければダメだという。曰く「売れなかったけど良い作品というのは読者や評論家の言うことで、作り手は言ってはいけない」とのこと。にもかかわらず、最近のライトノベルやアニメはマニア化し続けた結果、市場が縮小しているのだという。曰く「一クラス40人中、小説を読むのは5人くらいなので、残りの35人に読ませるために書いたのがライトノベルだった」のが、今ではライトノベルを読む人が少数派になっているという。
確かに、アニメやラノベに限らず、自分の好きなジャンルはより高尚で文化的なものだと思いたいし、俗っぽい印象がある「サービス業」とか「金を稼ぐ手段」と考えるのには抵抗がある。でも、まずは売れない(=ニーズが無い)となると存在自体が危うくなるわけで。それを考える意味でも興味深い一冊。