ゲームクリエイターかく語りきEX〜『ドラゴンクエスト』シリーズ

…という上記の『27人の証言』の元ネタであるTBSラジオ爆笑問題の日曜サンデー』10月23日放送分にて、『ドラゴンクエスト』の特集があったので紹介。

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スクウェア・エニックス 2011-09-15

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まずは作曲を手掛けるすぎやまこういち氏のインタビューを抜粋して紹介。

ドラクエ』の音楽を手掛けるようになった切っ掛けは偶然から。エニックスのゲーム『森田将棋』のアンケートハガキを書いたけど、出さずに放っておいたら、妻が出していた。
それを読んだエニックスの偉い方は、名前が平仮名で書いてあったので、小学生が書いたと思ったらしい。でもゲーム担当の方は僕が作曲家だと分かったので電話をかけてきて、「当社のゲームの音楽をやって欲しい」と依頼をされた。
ドラクエ』の音楽を手掛けるにあたり、ディレクターの中村光一さんから「中世ヨーロッパの騎士物語」という説明を受けて、作品のイメージが掴めた。
映画の音楽は劇中で1回聴けば終わり。でも、ゲームの音楽はプレイ中に繰り返し聴くので、地味なようであって、何回聞いても飽きない「聴き減りのしない音楽」を目指した。

驚いたのが、「ゲーム音楽かくあるべき」というポリシーを、音が出るゲーム自体が出始めたばかりの黎明期に確立していたこと。流石は大御所作曲家にして古くからのゲームマニアであるすぎやま氏と言うべきか。
ちなみに僕は、すぎやま氏が既に実績を山ほど築いている大御所作曲家とは知らず、テレビなどですぎやま氏の名前を目にしても「『ドラクエ』のすぎやまこういちとは、同姓同名(しかも同じ平仮名表記)の別人」だと思っていたのはここだけの話。


そしてスタジオゲストとして、『ドラクエ』の産みの親である堀井雄二氏が登場。
生放送で貴重な生証言が飛び出したので、ここで紹介。

ドラクエ』を作る切っ掛けは、家庭用ゲーム機でRPGを作ってみたかったから。それまでの家庭用ゲーム機はアクションゲームが中心だったけど、「ゲームオーバーの無いゲーム」としてRPGを作りたかった。
それまでのRPGは遊ぶために技術が必要だった。でも初心者向けに最初にレールを敷いて「後はご自由に遊んで欲しい」というゲームにした。

…まずは『ドラクエ』製作の切っ掛けについて。
今でこそ当たり前な「家庭用ゲーム機でRPG」だけど、当時のRPGはスペックの高いパソコン向けで、内容もパソコンユーザ向けの難解なものが殆どだった。
そこで初心者向けRPGとして作ったのが『ドラクエ』ということか。


続いては、色々な質問に対する回答。

※作品毎に何年も間隔が空くことについて
ナンバリングタイトル以外にも外伝作品の監修を行っているので忙しい。実際、『9』が発売されてからも外伝作品が6本も作られている。
加えて近年は、製作規模が大きくなっている。最初の頃は半年とか1年かからずにリリースしていたけど、ハードの進化や期待の大きさが凄くなっている。何より前作と同じ面白さだと「つまらない」と言われてしまう。


※『ドラクエ』のライバルである『ファイナルファンタジー』(以下『FF』)について
『FF』はプレイしたことがある。『FF』はプレイヤーに対して「映像で見せる話」で、『ドラクエ』は「体験する話」だと思う。

誰もが気になる「どうして発売までに時間がかかるのか」と「『FF』のことをどう思っているか」について語る堀井氏。


ハードの進化や映像の話が出たところで、メイン司会者にして(意外にも)『ドラクエ』好きを公言している爆笑問題太田光氏が語りだす。
曰く「映画ではCGとかの映像技術が進化しても、昔のスタントを駆使した映像の方が面白い。ハードや技術が進化するほど、本来の良さが薄れている矛盾が起きている」とのこと。
これは堀井氏も同感らしく…

絵が一回綺麗になると、ユーザーにとってはそれがボーダーラインになってしまう。
ドラクエ9』でハードがプレステ2からニンテンドーDSになったら、ユーザーから「絵が『8』より汚くなった」と言われた。
その前の『ドラクエ8』の時も、キャラクターの等身が変わったので「あれは『ドラクエ』じゃない」と言われた。
でも、実際に発売したら「やっぱり『ドラクエ』だった」と言われてヒットした。

新作が発表される度に、ファン(主に古参)から「これは『××』じゃない!」と批判される。『ガンダム』然り、ライバルである『FF』然り。そして『ドラクエ』もまた然り。
ただ、実際に発売されてプレイしてみたら、やっぱり『ドラクエ』というのは、見た目やハード的な部分よりも深い部分にある「ドラクエ的なモノ」が失われていないからなんだろうな。
現在開発中の『ドラクエ10』はナンバリングタイトル初のオンラインゲームということで、早くも同様の批判を散見するけど、今回も最後は「やっぱり(以下同文)」となると予想してみる。


すぎやま氏と並ぶ「ドラクエパートナー」である漫画家・鳥山明先生については、こんなことを…

鳥山先生と組む切っ掛けは『ファミコン神拳』の担当編集者だった鳥島氏の紹介。
鳥島氏が鳥山先生の担当も務めていて、「鳥山がゲームのキャラクターデザインをやりたがっている」という話を鳥島氏から聞いたので、『ドラクエ』のキャラデザを依頼した。
後で聞いたら、その話は鳥島氏のウソだった。「担当編集として、鳥山先生に新しい刺激を与えるために、ウソを言ってでもゲームの仕事をさせてみたかった」とのこと。ちなみに鳥島氏もかなりのゲーム好き。
鳥山先生の絵は「出過ぎず引き過ぎず」でゲームにハマる。例えば高橋留美子先生の絵を使うと「高橋留美子のゲーム」になってしまうけど、鳥山先生の絵だと「鳥山明のゲーム」ではなく『ドラゴンクエスト』になる。

漫画好きに取っては「ドクターマシリト」としてお馴染み、週刊少年ジャンプの敏腕編集者・鳥島氏の存在が大きかったという。
既に人気漫画家だった鳥山先生に「新たな仕事」としてゲームの仕事をさせたのも、ゲームが今後大ブレイクすることを予見していたのかもしれない。
鳥島氏と言えば「鳥山明を見出した名編集者」として有名だけど、堀井雄二を「『ドラクエ』の作者」としてゲームクリエイターの代表格に押し上げたのも、大きな功績だよなぁ。


他にも堀井氏は、こんな証言もしていました。

※『ドラクエ』シリーズにおける、自身のお気に入り作品について
印象深いのは『4』から『6』。この辺りからキャラクターを立てる様にした。『4』も最初は評判が良くなかったけど、後から評価されてきた。


※大ヒットの秘訣について
週刊少年ジャンプ」の記事を、いつも子供目線で書いていたから、どんな物が子供にウケるかという自信があった。
「友達と一緒に遊んだ」とか「発売日に並んで買った」という思い出も共有しているから、ロングヒットになったと思う。


※『ドラクエ10』について
『10』から「ゼネラルディレクター」という、チェックする役回りになったので、実作業には携っていない。だから僕の作業で遅れるということは無いし、発売が遅れても僕のせいじゃない(笑)。

最後の「遅れても僕のせいじゃない」発言はジョークとして受け止めておこう。
「お気に入りは『4』から『6』」というのは、いわゆる「天空シリーズ」。『1』から『3』までの「ロト3部作」はパーティプレイ(『2』)やキャラクターメイキング(『3』)という具合に、RPGのシステムを紹介することが中心であり、言ってしまえば「『ドラクエ』を作った目的」だった。
その「目的」が終わり、さて次の『ドラクエ』が目指す物は何か…というところで、今度はキャラを立てるようにしたということで、「新たな『ドラクエ』」ということで印象的だったのかな。
爆笑問題の太田氏も『4』は大のお気に入り。特に悪役であるデスピサロとロザリーの悲劇は「何で俺は、ゲームでこんなに感動したんだ!」と言うくらい感動したらしい。


堀井氏の「生証言ぶり」は飄々としていて、とても話し慣れているという感じ。
ドラクエ』作りについても、「作る度に、こんなの『ドラクエ』じゃない」と言われ続けている苦労を滲ませながらも、それはそれで楽しみながらやっている印象。