ゲームクリエイターかく語りき7(前編)〜『ポケットモンスター』シリーズ・田尻智氏

ゲームクリエーターによる「ゲームづくりのコツ」のようなものを紹介してみる企画も、7回目となる今回で一区切り。


テキストとして使用する本は引き続きこちら。

487233907Xゲームセンター「CX」
太田出版 2004-12

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トリを飾るのは、任天堂が世界に誇るビッグタイトル『ポケットモンスター』の作者・田尻智氏。

B0055BM2S2スーパーポケモンスクランブル
任天堂 2011-08-11

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田尻氏は元々ゲーセン通いをしていたゲームマニアで、独自の攻略法を記したミニコミ誌(と言ってもコピーした紙を手でホチキス止めした完全家内制手工業)をゲームセンターや通販で売っていた。
言わば「プロゲーマー」だった田尻氏がゲームクリエイターになった切っ掛けは…

田尻:ゲームアイデア大賞っていうコンテストがあったんですよ。優秀賞は賞金50万円で、実際にテレビゲームになるっていうんですよ。
有野:あー、自分の考えたアイデアが。
田尻:それで、PC8001っていうNECの初期のパソコンを買って、プログラムを自分で組むようになったんですね。
中学生の頃に夢にまで見た「『インベーダーゲーム』の続編作りてえなあ」とか「自分でゲーム作ったらどうなるんだろうなあ」という思いの第一歩を踏み出したんですね。

「好きなゲームの続編を作りたい」というのは、これまたありがちな、でもゲーム好きなら必ず一度は抱く願望だ。


コンテストでは優秀賞を受賞し、これを機にゲームクリエイターへの道を歩み始めた田尻氏。
デビュー作となった『クインティ』については、こんな製作秘話が…。

B000068H3Oクインティ
ナムコ 1989-06-27

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田尻:当時は『スーパーマリオ』のようにスクロールして、どんどんコースの先が見えてきて、新たしい世界が見えてくるのが楽しい、ということに気づいた人たちが、どんどんスクロールするゲームを作り始めたワケです。
それに抵抗したい心情があったんで、固定画面で考えたんです。
それと、昔のナムコのゲームは毎回新しいタイトルを出す時に、英語の動詞をテーマにしていたんですね。
例えば、『ディグダグ』だったら「掘る」とかね。
それを見習って、新しい動詞で固定画面にこだわって、新しいゲームを作ってみたんです。
散々迷った結果、動詞が「めくる」。内容は立っている所をめくると、足元が滑ってスッテンコロリンする、と。
そこをゲームらしく表現したのが『クインティ』です。

ナムコのゲームが動詞をキーワードにしている」というのは、過去でも紹介してあるので、以下を参照。
■ゲームクリエイターかく語りき3〜ナムコ・岩谷徹氏


ちなみに、この『クインティ』は完全なインディーズ作成で、完成した後にナムコに持ち込まれ、リリースされたという。で、なぜナムコなのかというと…

田尻ナムコの80年代び黄金時代にあたる名作ゲーム、『パックマン』とか『ディグダグ』とか『ポールポジション』とか『ゼビウス』とかね。
そういうゲームから吸収した、僕の知識からできあがったんで、そのお礼の気持ちって言うのかな。
オマージュってことになるんですけど。

自分の好きなゲームを元にして新たなゲームを作る。しかもそれを、好きなゲームメーカーに「お礼の気持ち」として持ち込むとは、良い話だ。


前編はここまで。後編では『ポケモン』の製作秘話を紹介。