あの伝説の事件を懐古してみる

ファミリーコンピュータMagazine』の裏話満載な『超実録裏話ファミマガ』を読んで、思い返さずにはいられない伝説(?)のゲーマー、否、伝説の「事件」について書いてみる。

4198632251超実録裏話 ファミマガ 創刊26年目に明かされる制作秘話集
山本直人
徳間書店 2011-07-14

by G-Tools
この本にも紹介されている、初期のファミマガにおける「『水晶の龍』野球拳事件」に匹敵する大事件。
それは「スーパータイガー事件」と呼ばれている。


初期のファミマガにおける「ウル技&ウソ技」と並ぶ名物コーナーが、規定ゲームのハイスコアを読者から募集してランクをつける「ハイスコアルーム」だった。そこで数多のゲームで圧倒的なスコア(9999万9999点など)を叩き出して王座に君臨していた読者の名が「ペンネーム・スーパータイガー」だった。
しかし、そのハイスコアの証拠写真はパソコンで合成されていたことが発覚。不正を行っていたということで、スーパータイガーは誌上で断罪された末、除名処分となった。これが「スーパータイガー事件」の顛末。
後日談として、この事件に関する読者の意見が紹介された。驚き・戸惑い・憤り、中には幾許かの理解と同情を示す意見もあり。編集部からは「日本中の読者がスーパータイガー君のためにお便りを書いてくれたんだ」「ゲームはいっぱい持っているみたいだから、今度は正々堂々とウル技とかを送って欲しい」と反省と更生を促すコメントが送られていた。
ちなみに上記『超実録』の中でも「パソコンで精巧な偽造写真を作った技術力には感心していた」なんて記してある。それだけ印象深かったということ。


この事件は言うなればゲーム史における最初の(そして恐らく唯一の)「カリスマゲーマーの不正行為」だった。
このすぐ後に「高橋名人16連射がインチキだと分かり警察に捕まった」というデマが日本中のファミコンキッズを混乱に陥れるワケだけど、ひょっとしたらこのデマがここまで信じられて広まったのも、この「スーパータイガー事件」という前例があったからかも…いや、これは考えすぎかな(以上余談)。


それから約25年が経った。『ファミマガ』はとうの昔に休刊し、ファミコンもその役割を負え「レトロゲーム」の括りに入れられた。ファミコンを遊びファミマガを愛読していたボーイズ&ガールスも大人になった。
そんな今、ふと思うこと。スーパータイガーは今、どこで何をしているのだろう?
今でもゲームを遊んでいるのだろうか。それとも多くの「元・ファミコン少年」がそうであるように、大人になった忙しさの中で、気がつけばゲームから縁遠くなってしまったのだろうか。
そして何より、自分が起こして自分の名を冠されて今なお語り継がれることになってしまった「スーパータイガー事件」のことを、どう思っているのだろうか。
今なお罪悪感に苛まれているのか。はたまた「若気の至り」として笑い話の如く思っているのか。


それを知るのは、この世でスーパータイガー本人のみだろうけど。