ゲームクリエイターかく語りき1〜タイトー・西角友宏氏

レトロゲームに関する本を色々と読んでいる今日この頃。
それが高じて、当Blogの新企画としてゲームクリエーターによる「ゲームづくりのコツ」のようなものを紹介してみる。


テキストとして使用する本はこちら。

487233907Xゲームセンター「CX」
太田出版 2004-12

by G-Tools
ゲームセンターCX』と言えば、今でこそ「有野課長レトロゲームに挑戦する番組」としてお馴染みだけど、開始当初はゲームメーカーを訪問して、そのメーカーを代表するクリエイターにインタビューするという内容だった。それを纏めたのが上記の一冊。刊行が2004年といささか古めだけど、本質的な部分は変わっていないはず。


1回目の今回は日本におけるゲームの元祖である『スペースインベーダー』を開発したタイトー西角友宏氏のインタビューを紹介。
B001PO5IE8スペースインベーダー エクストリーム 2
タイトー 2009-03-26

by G-Tools


まずは『スペースインベーダー』の参考になったゲームについて

西角:『ブロックゲーム』というゲームが出まして、そのゲームを見た時はショックだったですね。
有野:よくある、ボールをはじいて壁を壊すゲームですね。
西角:そうです。ショックというか感心したんです。だから『スペースインベーダー』を見ていただければわかる通り、雰囲気的に『ブロックゲーム』のイメージですよね。
西角:ただ、『ブロックゲーム』と違うのは、あのゲームはこちらが攻撃するだけじゃなくて、相手も攻撃してくるんですね。

「相手が攻撃してくるゲーム」なんて当たり前…と思いきや、ゲーム創成期には前例が無かったらしい。
そして『スペースインベーダー』にも、その要素を取り入れたところ…

有野:『スペースインベーダー』の凄かったところはどこだと思いますか?
西角:『スペースインベーダー』が他のゲームと圧倒的に違ったのは、インベーダーに侵略されると、自機に残数があってもゲームオーバーになるんですよね。これが営業に凄い反対されましたね。そんなことは過去に無いから、「そんなことをしたらお客さんが怒り出す」と言われてたんですが…。
有野:でも、それが面白そうですよね。
西角:そうですね。お客さんは喜びましたね。スリルがあるとか、よく受け止めてくれたので、結果的にそれがヒットした原因になりましたね。
有野:緊張感がありますもんね。

「敵が攻撃してくる」の延長にある「敗北条件(侵略される)によるゲームオーバー」という、こちらもゲームでは常識な事も、当時は反対されたのか。でも、それが「欠点」どころか強力なセールスポイントになって、一大ブームを巻き起こしたのは周知の事実。
ありがちな言い方になるけど「逆転の発想」であり「既成概念の打破」が、ヒットの要因だったのかも。


日本に最初のゲームブームを巻き起こした西角氏だけど、自身はどんなゲームで遊んでいるかと思いきや…。

有野:ゲームはあまりやらないんですか?
西角:私は、部下には「あまりゲームにのめり込むな」って教えてるんですよ。私の部下の中で、ゲームにのめり込んで伸びた奴がいなかったんですよ。
有野:ゲーム好きとゲームが作れる人は違うんですか?
西角:違うんですね。私と同じで、あんまりゲームをしない方が、結構いいゲームを作っていたので、そういう考えですね。

他にも「自分にとってゲームは、遊んで楽しいというよりも、作って楽しいもの」と語る西角氏。
既存のゲームにのめり込んでしまうと、上述の「相手も攻撃してくるゲーム」のような、新しいゲームのアイディアは出てこないのかもしれない。