「エピソードZEROもの」について

今冬は『Fate/ZERO』に肖って「/ZERO強化期間」でした。


ここ最近…と言っても10年くらいかな、往年の人気タイトルの前日譚、いわゆる「エピソードZEROもの」が流行っている気がする。
「続編」ではなく「外伝」とも違う、「ZEROもの」の魅力とは何だろう?


それを考えるために…というワケじゃないけれど、僕のハマった「ZEROものアニメ」を紹介してみる。


■『聖闘士星矢 THE LOST CANVAS 冥王神話

B0051PWQF6聖闘士星矢 THE LOST CANVAS 冥王神話<第2章> Vol.6 [DVD]
バップ 2011-07-20

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『星矢』はここ10年くらいで(原作者・車田正美先生が手掛けた作品も含めて)多くの派生作品が作られているけど、代表格としてアニメ化されたのがこの『冥王神話』。
「本編」で断片的に語られていた「かつての聖戦」こと、数百年前の冥王ハーデス軍と聖闘士たちとの激闘が描かれていて、事実上の打ち切りだった「ハーデス編」のリメイク要素も含んでいる。
主人公は本編と同じくペガサス座の聖闘士・テンマだけど、物語で圧倒的な存在感を出しているのが(当時の)黄金聖闘士たち。本編では敵だったり、味方だとしても「見守る兄貴分」な位置付けだったけど『冥王神話』では主人公たちと共に、否、揃いも揃って主人公を差し置いての大活躍を見せている。
特に本編では散々な扱いだった「蟹座」が、かなり格好良いキャラだぞ(笑)。
一方、ハーデス側の描写も充実している。オリジナルで新たな冥闘士や、新たな舞台である太陽系の惑星を模した「八つの魔宮」も登場。
それらの要素が相まって、本編以上に『聖闘士星矢 ハーデス編』な一作となっている。


■『装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズ

B004WBBEIU装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズ DVD-BOX (初回限定生産)
バンダイビジュアル 2011-07-22

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こちらも「本編」であるテレビシリーズ終了後に多くの外伝・続編、そして前日譚が作られた『ボトムズ』。
そして、前日譚の中でも全12話(+総集編の劇場版)という圧倒的なボリュームと、最新技術によるハイクオリティを誇るのが、この『ペールゼン・ファイルズ』。
ちなみにタイトルになっているの「ペールゼン」とは、主人公キリコ・キュービィーが本編以前に所属していた精鋭部隊「レッドショルダー」の司令官。でも、そのペールゼン自体も本編ではなく外伝OAV(1985年発売)で登場したゲストキャラの敵役だった。
それがシリーズを重ねるにつれて「過去の鍵を握る人物」としてより重要視され、20数年後にはOAVシリーズにその名を冠されることになるとは、大出世だなぁ。


■『マクロスゼロ

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バンダイビジュアル 2008-08-22

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「『マクロス』シリーズ20周年記念作品」として2002年からリリースされた一作。
本編である『超時空要塞マクロス』より1年前の、地球人による統一国家を作るための「統合戦争」の時代。ある南の島で発見された謎の遺跡が物語、ひいてはマクロスシリーズの鍵を握ることになる。
また後に製作された『マクロス7』では劇中劇として登場し、ヒロインのランカ・リーがブレイクする切っ掛けにもなっている。これもまた、新しい「ZEROもの」の使い方だ。


■『Fate/Zero

B005ZOPANI『Fate/Zero』 Blu-ray Disc Box ?
アニプレックス 2012-03-07

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今、最も熱い「エピソードZEROもの」である『Fate』シリーズの前日譚、否、作品のキーワードを借りて表現するなら「根源に至る」一作。
「本編」こと『Fate/stay night』の主人公・衛宮士郎にとって、養父である衛宮切嗣と、仇敵でありラスボスである言峰綺礼の激闘と因縁が中心のハードな物語。
加えて、新米魔術師&征服王の凸凹コンビやら、エリート魔術師&その婚約者&忠義の騎士による三角関係やら、殺人鬼&妄想偏執狂というキ○ガイコンビやら、ある特定の魔術師&サーヴァントを狙う復讐鬼コンビやら、揃いも揃って個性的過ぎる。
仄聞によると、原作者・虚淵玄氏曰く「当初はクライマックスの、切嗣と綺礼の対決シーンのみを描く予定だった。それが想像がどんどん膨らんで、各々のマスターやサーヴァントたち設定や物語を書くに至った」とか。
Fate』シリーズの根底にある膨大な設定が、作品の魅力と相まって、作者すら予想し得なかった傑作を生み出すに至ったワケか。


…と、「ZEROもの」について考察…とはいかないまでも、簡単な紹介を通じてその魅力を分析してみた。
前日譚の魅力とは何か。それは架空の物語やキャラクターであっても持ってて然るべき「過去」を掘り下げていること。
もちろん「本編」の都合に応じた設定だったり、そこからの逆算だったり、物によってはご都合主義な後付けだったりするけど。そこをより詳しく知りたい、否、物語として観たいと思うのがファンの常。あるいは作り手の常かもしれない。
むしろ、設定を「制限」ではなく「ヒント」として、本編をよりアップデートさせた内容になっているのも多い。
さらに言うと、ファンの抵抗が「続編」より少ないのも一因かもしれない。綺麗に完結した作品で、下手に続編を作るのも…ね。


さて、今後はどんな作品の「エピソードZERO」が作られるのか、こっそり楽しみにしてみる。